ある石川賢ファンの雑記

石川賢の漫画を普及し人類のQOLの向上を目指します

石川賢紹介 第七回 真ゲッターロボ

 

 

真ゲッターロボ

 

 今回語る前に一つ別の話をしたいと思います。それは石川賢と海外SFの関係性です。今まで何冊か読んできて私は石川賢の作風にはかなり海外SFの影響が強くあると思っています。私自身SFにはそこまで詳しいとは言えない人間なのですが、それでもある程度分かるくらい石川賢と海外SFの関係は強いと言えるでしょう。特に、ゲッターロボサーガのテーマである人類の進化とそれを導く大いなる意思というのはアーサーCクラークの幼年期の終わりとスタンリーキューブリックの2001年宇宙の旅を源流としていると私は考えています。それを前提として今回は解説していきますのでそこんところよろしくお願いいたします。

 

 本作はゲッターロボGゲッターロボ號を繋ぐミッシングリンクとして作られた作品です。真ゲッターロボが作られた経緯とゲッターロボ號で語られた早乙女研究所で起こった事件。それが本作が描く物語です。

 百鬼帝国を倒して以降、まだ見ぬ脅威に対抗するために早乙女博士は新型のゲッターロボを開発します。それが真ゲッターロボ。その眼には意思が宿り、パイロットに夢を見せます。その夢とは、ゲッターの未来。宇宙から来た敵と交戦する竜馬はゲッターと同化し夢を見る。それは無数のゲッター艦隊を率いる最強のゲッターロボ、ゲッターエンペラーの姿でした。太陽系と同サイズの大きさ、合体するだけで星を砕き敵艦隊を壊滅させるパワー、そして「チェンジゲッターエンペラーワン!」と叫ぶその声は、宇宙を震撼させるその声は、竜馬のものだった。

 人類を進化させてきた意思を持つエネルギー、ゲッター線。強大な力を持ち人類を進化させる精神体という点では幼年期の終わりに出てくるオーバーマインドに近いものがあります。また、竜馬が見る荘厳な光景は2001年宇宙の旅でモノリスが見せたヴィジョンに通じるものがあります。しかし、石川賢はそこに独自の解釈をぶち込んでより進んだ段階へと昇華しました。それはその進化を危険視する勢力です。真ゲッターロボに出てくる敵はこういうのです。ゲッターを滅ぼさなければ未来はない。宇宙の癌、ゲッターを取り除くのだと。なぜ地球を滅ぼそうとする側が正義を語るのでしょうか。現時点での人類は宇宙進出すらままならない状況でどうして宇宙の彼方から来た敵に恨まれるのでしょうか。竜馬たちは戦いの果てにその答えにたどり着きます。敵は未来から来ていたのです。未来、宇宙を侵略するゲッターエンペラーに対峙した敵は母星を守るため決死の作戦に出ます。それは時空の穴を通って過去に飛び、ゲッターエンペラーが生まれる前に人類を滅ぼすことです。竜馬はその眼で見るのです。かつて自分が戦ってきた侵略者達と自分が同じ、いやそれ以上の脅威になることを。ゲッターは人類に何をさせたいのでしょう、ゲッターの本質は何なのでしょう。石川賢は言いました。ゲッターの本質は悪であると。命は生存圏を拡大させるほど他者の居場所を奪っていきます。人類が進化し、宇宙に進出するということは他の星ともぶつかるということ。生きる場所を、資源を奪い合う。命の本質が奪うことである以上、ゲッターもまた悪であるのです。

 人類が進化し、宇宙に旅立つ。数々のSFで描かれてきた未来予想図です。しかし、ゲッターはその先の戦いを描きます。そしてその先の人類を戦わせるゲッターの目的、そこに踏み込んでいくのです。ゲッターは人類に戦いを齎してきました。恐竜帝国を地下に追いやり、ゲッターへの恨みを抱かせ人類と敵対させる。未来の戦いにおいて星々を侵略する脅威になることで百鬼帝国やダビィーンなどの勢力に人類を襲わせる。人類を鍛え、強くするために敵を作っているようです。ゲッターは人類を強化し何を企んでいるのか。それを知るには宇宙の真理までたどり着かなければなりません。この果てしない旅に本作は誘います。さあ、ゲッターの命の旅路に、踏み出してみませんか。命は終わりなく旅を続けていくのです。果てしなく、宇宙の終焉、そして別の宇宙にまで。

 よい石川賢ライフを。