ある石川賢ファンの雑記

石川賢の漫画を普及し人類のQOLの向上を目指します

石川賢紹介 番外編 新ゲッターロボ

「原作に挑戦してこその石川賢イズム」

 

 OVAゲッターロボシリーズ三作目の本作は個人的に一番スタンダードなゲッターロボだと思っている。とは言え途中で黒平安京に転移して木造戦艦と安倍晴明が戦う絵面は初めて見る人には訳が分からないだろう。私は柳生十兵衛死すを読んでいたから特に違和感なく受け入れることができた。なので他の人の感想を探していたら黒平安京パートが唐突とか必要性を感じないとか色々言われていて驚いたものだ。思えば、このブログを始めた目的はこれまで読んでこなかった人たちに石川賢の素晴らしさ知ってもらうことだ。それなのに、石川賢にどっぷりと浸かった私の視点で語っても意味がないのではないか。かと言って私にはそれ以外の価値観を持ち合わせてはいない。伝道するならば、もっとうまくやれる人がいるのではないか。そう考えることも少なくない。だとしても、私は書き続ける。やらない理由はない。

 

 新ゲッターロボはこれまで描かれてきたゲッターロボサーガをなぞりながら、独自の展開をしていくまさに新時代のゲッターロボである。暴力に明け暮れる荒んだ日常を送る竜馬。そんな竜馬に刺客を差し向けスカウトする早乙女博士。仲間の顔を素手で切り裂くテロリストの隼人。ここまでは王道だ。そこにぶち込まれる武蔵坊弁慶。日本昔話の怪物のような風体、そして畑や家畜を荒らし女を寝取る悪行三昧。ゲッター3のパイロットとしてこれまでにない新機軸だ。しかしその造形は石川賢のキャラ造形を踏襲している。それぞれの戦う動機もしっかりと描かれている。早乙女達人の死をきっかけにその無念を背負い、戦うしかない運命を知る竜馬と博士。ゲッターの力に魅了され、調べつくそうとする隼人。自分を真っ当な人間に育てなおそうとしてくれた和尚を鬼の襲撃によって失い、敵討ちへと身を投じる弁慶。三人の生い立ちがしっかりと語られ、その戦う理由が理解できる。一方で迫りくる敵、鬼は謎に包まれたままだ。どこから来るのか、どれだけいるのか、まるでわからない。わかっていることは、早乙女研究所を狙ってくることと噛みつかれた人間は鬼になってしまうこと。達人も、隼人の仲間も、和尚も、鬼となり、ゲッターチームによって介錯された。犠牲を背負って彼らは戦い続けるのだ。

 

 話は黒平安京に移る。度重なる襲撃を退け、一つになったゲッターチーム。敵を追って琵琶湖に飛び込んだ彼らが見たものは、湖底に鎮座する黒平安京であった。そして、ゲッターロボ諸共黒平安京に呑み込まれてしまう。漂流した先で木造空中戦艦を駆る源頼光(女)と協力し、現代に鬼を送っていた安倍晴明を倒すのであった。

 わかるか。わからないだろう。しかし書いたままだ。一見奇妙奇天烈だが、このパートは重要な意味を持つ。最終回での竜馬の行動にも影響を及ぼす重要なパートだ。ゲッターロボが長い間山に埋まっており、生身のアクションが大半を占めるという点がロボットアニメとして若干致命的だが些細な問題だろう。原典であるゲッターロボサーガにおいてもアラスカ戦線のほとんどの期間ゲッターロボ號が修理中だったこともあるし、問題はない。

 

 本作の特徴として最も際立つのは竜馬の特異性だろう。本作の竜馬は他の二人と比べて異様に強い。ゲッター線の寵愛を一身に受けている。ゲッター1になった途端出力が桁違いに上がり、トマホークの素材で作った刀を使ったとは言え生身でもゲッター線の斬撃を飛ばすほどだ。その一方で、隼人と弁慶はゲッター線の危険性に気付いていく。敵がくるからゲッターがあるのか、ゲッターがあるから敵がくるのか。そして現れる四天王。果たしてゲッター線は人類をどこに連れていくのだろう。

 この先は自分の目で確かめるのだ。確かなことは一つ。愛する者がいる限りそのためにだけでも戦い続けるというコトだ。 

 

 もう一つ見所を挙げるとしたら、それは歌だ。JAM Projectによる主題歌「DRAGON」は本作の戦闘を華やかに、ダイナミックに彩ってくれる。イントロだけで血液が沸騰し、かっこいい歌と共に敵を倒すゲッターロボのカッコよさと言ったら心のマグマが沸き上がるほどだ。かっこいいアクションとダイナミックなストーリー。そして神々との無限の闘争。石川賢入門に相応しい一作である。おすすめだ。

 

 

 よい石川賢ライフを。