ある石川賢ファンの雑記

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石川賢紹介 第四回「ゲッターロボ號」 アラスカ編

 

 

ゲッターロボ號」

 

 日本を離れアラスカに飛んだゲッターチーム。彼らが見たのは地獄だった。降り立った戦場でメタルビーストに追い詰められた米軍を助けたゲッターチームだったが、逃げる部隊をかばって盾になったことが原因でゲッターが破損してしまう。日本に救援を頼み、部隊がそこに合流するまでの殿をするゲッターだが段々と追い詰められていく。自爆を覚悟した次の瞬間、現れたのはステルス戦闘機だった。その名はステルバー。アメリカが極秘に開発したスーパーロボットだ。何とか命を拾い、米軍の前線基地に身を寄せるも、ゲッターの破損は酷く、大規模な修復が必要だった。更にゲッターチームは飛び入り参戦のはぐれもの。米軍には養う義理も物資もない。一番旧式のドッグでパーツもないまま修理しなければならなかった。苦難は序の口である。ステルバーのパイロット二人の片割れ、シュワルツは極度のレイシストでありゲッターチームを敵視していたのだ。

 アラスカ編の特徴はこのシビアさ、泥臭さにあると私は思う。当たり前の様に人が死んでいく過酷な戦場、そこにまつわる数々の問題、そして人間ドラマ。これまでのヒーロー的なスーパーロボの文脈とは打って変わったリアルな戦争モノの雰囲気がこの賞の魅力と言えるだろう。

 もう一つ、アラスカ編の特異性として話の展開が翔を中心に回っていることが挙げられる。翔がシュワルツを助けたことからこのドラマは始まる。日本人を見下していたシュワルツは倒れる鉄骨を居合切りして自分を助けた翔を気にかけ始める。一方翔は戦場に兄、信一の気配を感じていた。サイボーグに改造された信一が発する思念を受け取っていたのだ。

 翔とシュワルツの恋模様、改造された信一、壊れたゲッター、いつ来るかもしれない日本からの救援。色々な思惑を孕んでこの戦争は全てを呑み込んでいく。

 もちろん、辛いだけではない。石川賢と言えば爽快なアクション、そして暴力である。過酷な戦場の中にこそヒロイックな魅力は輝く。各国のスーパーロボット終結や待ちに待ったゲッターの復活、巨大陸戦用戦艦テキサス、信一と翔の壮絶な決着など名シーンやかっこいい見開きもいっぱいある。なのでこれまでのゲッターが好きな人も十分楽しめるのだ。

 この物語の決着は敵移動基地ドラゴンタートルと巨大陸戦用戦艦テキサスとの生気の決戦によって爆発的な終結を迎える。進軍するドラゴンタートルに奇襲を仕掛けてテキサスとスーパーロボット軍団は最後の戦いを開始する。ゲッターもその中にいた。テキサスの捨て身の前進によってドラゴンタートルは追い込まれていく。カナダのロボットが命がけで開けた穴からステルバーとゲッターはドラゴンタートル内部に侵入する。かくして二つの最終決戦の幕は切って落とされた。基地内部では信一のメタルビーストが先行したステルバーを撃墜しゲッターに一騎打ちを仕掛ける。以前は信一が元に戻ると信じていた翔は既に覚悟を決めていた。兄は死んだ。自分がそれを受け入れなかったためにドイツのパイロットは死んだのだ。もう誰も死なせないそのために自らの手で信一を葬り去るのだ。超高速の戦闘、ゲッターは腕を切られ腹を貫かれる。しかし、怖気づくゲッターチームではない。敵が背後から剣を突き刺した瞬間に相手を掴み、チェンジして反撃に出たのだ。向き合った相手に突き刺す哀しみのドリル。今過去を振り切った。そして、翔は未来を掴もうとしていた。生きていたシュワルツを救おうとする翔、その時見たものは昔の様に優しい顔に戻った兄だった。「いけ、翔」死が彼を開放したのだ。翔はシュワルツを背負ってゲッターに乗り込む。「そうさ愛する者をこれ以上」復讐ではない。地獄で見つけた戦う理由、戦士の覚悟。そして愛。アラスカ戦線は愛と正義の勝利によって幕を閉じたのだ。

 まだまだ語りたりませんがこれ以上は実際に読む方がいい。故にここで終わりなのです。次回は最終章、本当のゲッター編を解説いたします。物語の終わりに向けて全てが呑み込まれていく圧倒感、ゲッター線の真理。全てが終わり、そして始まる。私たちは伝説をこの目で目撃するのです。乞うご期待!

 よい石川賢ライフを!