ある石川賢ファンの雑記

石川賢の漫画を普及し人類のQOLの向上を目指します

石川賢紹介 第十三回 極道兵器

「よくも、よくもこんなスバラシイ身体にしてくれたのう! 最高じゃあ!」

「社会の正しい姿とは、目に見える健全さと、目に見える不健全さとがちゃんと、ここにあることだ! 不健全さがない社会は健全さも目立たない!」

 

 本作には石川賢の魅力が全て詰まっている。破壊! 暴力! 狂気! そして男! 男の生きざまがこれ以上ないほどに描き切られている。男の人生はいつだって戦場。刃握って血の海をかき分け進むものだ! そして、そんな石川賢節の体現者にして破壊と暴力の化身、本作の主人公たる男の名は、その名は岩鬼将造。人呼んで極道兵器!

 岩鬼将造という超ド級の男の生きざま、この世にこれ以上のエンターテインメントがあるだろうか、いやない! あるはずがない!

 岩鬼将造は岩鬼組の跡取りとして生を受けるも、その凶暴性故に極道の世界から追いやられ傭兵として世界を巡り戦っていた。その目的は一つ。殺し合いそのものだ。人が死ぬ時の悲鳴が体中を駆け巡る瞬間が何よりも快感。殺すために生きて殺すために殺す。それこそが岩鬼将造なのだ。そんな将造が日本に戻ってきたきっかけは父の死だった。自分を追放した父にかける情はさほどないが、殺した相手には興味があった。デス・ドロップマフィア。日本を支配せんと企む最凶最悪のマフィアである。強ければ強いほど、外道であるほど、将造の血は湧き踊る。日本を巻き込む将造の喧嘩が始まるのであった!

 岩鬼将造の魅力、それはその存在の強さ。溢れ出るパワーだ。どこまでも進化する兵器、惑星を押しつぶすロボット、神と仏の軍団、ブラックホールのおまんこを持つ忍者、それらを描いてきた作者がこう太鼓判を押すのだ。こいつが一番強い奴と。なぜか、読めばわかる。石川賢が漫画を描く時に一番拘ったのは説得力だ。そんな石川賢が一番強い奴と断言するだけの説得力がある。どんな時でも男ぶりを極めている。故に極道。崩れゆくビルを人の波乗り板に乗ってこの夏一番の波に乗る男が他にいるだろうか。気迫で迫りくる銃弾をはじき返す男を見たことがあるか。そして極めつけはこのシーンだ。倉脇のビルにカチコミをかけ、重傷を負った将造は内閣特務捜査官赤尾虎彦によって無断で全身兵器のサイボーグにされてしまう。意識を取り戻し、自分の身体を見た将造は咽び泣いて歓喜するのであった。これで最強の極道、正真正銘の極道兵器になれると。これだ。これこそが岩鬼将造だ。存在の在り方が違う。男としての格が違うのだ。男ぶりで勝っていれば負ける勝負はない。ビビッて芋引いた方が負けるのは極道の世界の鉄則である。道理も道徳も蹴っ飛ばし、将造は勝ってしまうのだ。

 そんな岩鬼将造の喧嘩は常に派手だ。相手も強烈で狂気に溢れた男ばかりだ。倉脇重助、人間核野郎カイザー、シャブ極道、原子力空母から潜水艦、戦闘ヘリ、それらに勝る男こそ岩鬼将造なのだ。

 特に好きな敵はシャブ極道こと鉄っちゃんだ。その凶暴性によって将造と惹かれ合い、兄弟の契りを交わした男。修羅同士の友情、仁義、そして殺し合う定めの悲しさと殺し合いの情熱。楽しく、そして悲しい戦いは熾烈を極める。シャブによって強化された鉄っちゃんと極道兵器の一騎打ちは満月の夜にその終わりを告げる。月をバックに描かれる決着のシーンは一枚の絵画の様に美しい。戦う事でしか語り合えない怪物たちが唄う仁義の詩、暴力の世界に咲く一輪の花。これこそ石川賢の真骨頂である。

 ああ、スバラシイ。なにがいいかって、この漫画は殺しと破壊がとても楽しく描かれているのだ。残酷で血みどろで汚くて、そんな死と破壊がたまらなく楽しい。人間の原始的な快感を呼び起こし理性を消し飛ばしてしまう面白さがある。一切の言い訳も美化もない純粋な暴力の魅力を余すところなく描き切っている。何も恥じることはない。本来これらは楽しいものなのだ。何も負い目を感じることはない。この暴力の世界こそ人間が感じる最高の愉悦なのだ。勿論健全な愉しみではない。それがいい。冒頭のセリフにある通り、健全と不健全を両方見てこそ人は善と悪を知り、正しくあろうとすることの尊さを知り、社会は正しい姿に向かって進んでいくのだ。この漫画こそ目に見える不健全そのものである。個人的な意見としては義務教育に組み込むべきとすら思っているくらいだ。

 暴力を! 破壊を! 闘争を! 浴びるほどに味わいたいあなたに本作をお薦めする。石川賢の濃縮原液百万% 飲み干す男はいるか!

 よい石川賢ライフを。

 

 

極道兵器 1 (SPコミックス)

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極道兵器 3 (SPコミックス)

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  • 作者:石川 賢
  • 発売日: 2002/12/19
  • メディア: コミック
 

 

 

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  • 発売日: 2012/01/07
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