ある石川賢ファンの雑記

石川賢の漫画を普及し人類のQOLの向上を目指します

石川賢紹介 第14回 回天 〈KAITEN〉 幕末銃剣士

 

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これは私がまんだらけで買った単行本

 まずはこの画像を見て欲しい。私が掴んでいる部分、具体的に言うと153p~210pまでの部分。この部分がなんだかわかるだろうか。これは単行本化の際に書き下ろされた最終回だ。57pもの加筆である。本作は雑誌休刊による打ち切りで、掲載分だとかなり中途半端に終わってしまっている。まあ加筆の分含めても俺たちの戦いはこれからだエンドなのだが、少なくとも父の仇である甲賀屋新兵衛を倒しているので読者としては区切りをつけて納得ができる。読者への誠意、プロとして物語に決着をつける責任、石川賢が漫画家という肩書に持つ誇りが感じられる。そして実は、私はネット上で関係者を名乗る人物から裏話を教えてもらった。打ち切りを告げた時、こんな感じだったらしい。

 

「すみません、掲載誌廃刊になるんです‥‥」

「OKOK、でもラストはぜんぶ描かせて」

「え?」

「コミックスよろしくね」

打ち切りに慣れている。

 

 それでは本題に入ろう。本作は幕末を舞台とした銃弾と火薬マシマシの超アクション漫画である。動乱の時代。諸外国の魔の手から日本を守るため、攘夷に殉じる志士達がいた。回天はその一人であり、坂本竜馬と手を組んで海兵隊を指揮する快男児である。

回天は刃と拳銃を合体させた銃剣を操り、敵をバッタバッタと殺していく。全身兵器、超ド級の戦士である。藩も侍もない、何にも囚われぬ自由を好み、幕末と言う時代にその銃弾で風穴を開ける。敵は悪徳商人甲賀屋新兵衛。日本にアヘンを蔓延させ、その手に支配しようと企んでいる。そして、回天の生まれ故郷である藩を滅ぼし、父を殺した仇である。今! 全てが爆発する! 破壊の次ぐ破壊。回天はその心の赴くまま限りない闘争に挑むのだった。 

 本作の魅力、それは石川賢一流のアクション描写、コマ割り、暴力と破壊、人間の本能が求める娯楽性そのものだ。特に素晴らしいのが銃剣の描写だ。近接武器と銃の融合というコンセプトの強みを活かし切っている。特撮などで剣と銃を合体させた武器はよく見るが、この銃剣は一味違う。刃が銃口と同じ方向ではなく、柄から伸びている。つまり、逆手持ちの剣と銃の融合なのだ。この意味が分かるだろうか。銃と剣の攻撃方向が違う、四方向の攻撃を可能としているのだ。また、逆手持ちであることは順手持ちよりも更に密着した状態に適している。本作の戦闘は多対一の乱戦が多いため、この形質は有効に働く。両手に持つ銃剣で左右に斬りつけながらの前方への銃撃。銃撃で牽制しつつ迫りくる相手に剣で対応。銃撃が効かない相手に剣を使って装甲の隙間への刺突。剣を突き刺して船の外壁を移動。剣を使った防御。剣を使った障害物の排除からの銃撃。石川賢の才能。いくら語っても余りあるその力の一端。それは戦闘の組み立ての上手さだ。アクションの目的と行動、結果、戦術の方向性。それら全てがわかりやすく表現されている。そして理に適っているように見える。私は格闘の専門家でもないし戦術にも詳しくない。ただそんな私でも理解できるほどに上手く戦っているのだ。特に力がこもっているのは最終回だ。敵の戦艦内での戦闘。閉所、多対一、遮蔽物が多く回天に、そして相棒の銃剣にぴったりの戦場だ。そのポテンシャルの全てを活かした戦闘と戦術。漫画家やアクション監督、アニメーターを志すなら一度は見るべきだ。動くとは、戦うとはこう描くのだと教えてくれる。これが石川賢だ。

 よい石川賢ライフを。

回天<KAITEN>幕末剣銃士 (GSガイズ)